いまは流行作家としてときめくローラ・シェーン、かつては孤児院で辛酸をなめた薄倖の美少女だった。これまでの生涯、何度か人生の危機や事故に見舞われそうになったが、そのつど、どこからともなく立ち現われて危難から救ってくれた“騎士”がいた。そのたび…
1974年、世界はかつてない暗黒時代を迎えていた。第二次世界大戦で圧倒的勝利をおさめたナチス・ドイツが、ヨーロッパはおろかアジアやアフリカ、さらには南アメリカまで支配していたのだ。ナチスの魔手は次第にアメリカ合衆国へと伸び、ふたたび戦争が起こ…
“マリオン・マーシュここに住めり……” ニックと妻のジャンが、移り住んだ古い家の壁紙の下に見つけた口紅のなぐり書き。その落書きは、かつてこの部屋に住んだ無名の女優マリオンが残したものだった。彼女は才能を認められ、いよいよハリウッドヘという前夜に…
ニューヨークの小さなラジオ局で、ニュース・ディレクターをしているジェフは、43歳の秋に死亡した。気がつくと学生寮にいて、どうやら18歳に逆戻りしたらしい。記憶と知識は元のまま、身体は25年前のもの。 株も競馬も思いのまま、彼は大金持ちに。が、再び…
過去のある場所にいると思い込むことによって時間旅行を行う能力を持つサイモン。彼の使命は、アメリカ大統領の命を受けてヨーロッパへと向かったまま、行方不明になっている「Z」という男の正体を探り出すことだった。Zはタイタニック号に乗船していた可能…
女ともだちの養父の自殺現場に残された一通の青い手紙。その謎の手紙は90年前、ニューヨークで投函されたものだった。 ぼく、サイモン・モーリーはニューヨーク暮らしにすこしうんざりしはじめていた。そんなある昼下がり、政府の秘密プロジェクトの一員だと…
1945年の東京。空襲のさなか、浜田少年は息絶えようとする隣人の「先生」から奇妙な頼まれごとをする。18年後の今日、ここに来てほしい、というのだ。そして約束の日、約束の場所で彼が目にした不思議な機械 それは「先生」が密かに開発したタイムマシンだっ…
「 また、会えたね」。昭和二十年五月、神戸。疎開を前に夢中で訪ねたわたしを、あの人は黄金色の入り日のなかで、穏やかに見つめてこういいました。六年半前、あの人が選んだ言葉で通った心。以来、遠く近く求めあってきた魂。だけど、その翌日こそ二人の過…
真希は29歳の版画家。夏の午後、ダンプと衝突する。気がつくと、自宅の座椅子でまどろみから目覚める自分がいた。3時15分。いつも通りの家、いつも通りの外。が、この世界には真希一人のほか誰もいなかった。そしてどんな一日を過ごしても、定刻がくると一日…
昭和40年代の初め。わたし一之瀬真理子は17歳、千葉の海近くの女子高二年。それは九月、大雨で運動会の後半が中止になった夕方、わたしは家の八畳間で一人、レコードをかけ目を閉じた目覚めたのは桜木真理子42歳。夫と17歳の娘がいる高校の国語教師。わたし…
鹿島翔香。高校2年生の平凡な少女。ある日、彼女は昨日の記憶を喪失している事に気づく。そして、彼女の日記には、自分の筆跡で書かれた見覚えの無い文章があった。”あなたは今、混乱している。若松くんに相談なさい……” 若松和彦。校内でもトップクラスの秀…
ぼくの飼っている猫のピートは、冬になるときまって夏への扉を探しはじめる。家にあるいくつものドアのどれかひとつが、夏に通じていると固く信じているのだ。1970年12月3日、かくいうぼくも、夏への扉を探していた。最愛の恋人に裏切られ、生命から二番目に…