タイムトラベルの本棚

タイムトラベルを題材とした小説、映画の感想

『マリオンの壁』ジャック・フィニイ 福島正実@訳

“マリオン・マーシュここに住めり……”

ニックと妻のジャンが、移り住んだ古い家の壁紙の下に見つけた口紅のなぐり書き。その落書きは、かつてこの部屋に住んだ無名の女優マリオンが残したものだった。彼女は才能を認められ、いよいよハリウッドヘという前夜に、自動車事故で急死していた。

落書きを見つけた数日後、偶然にもニックとジャンは、マリオンが最後に出演した映画をTVで見た。ほんの端役だったが、マリオンの印象は鮮やかだった。そのとき、ほの暗い部屋のどこかからニックに囁く声がした。ジャンの体にマリオンが憑依している……。

映画を愛する人すべてに贈るノスタルジック・ファンタジー

 

裏表紙 あらすじより

 

マリオンの壁

 MARION'S WALL

  Jack Finney

 

 

1973年発表。

『ふりだしに戻る』の後に発表された、ジャック・フィニイの10作目の長編小説です。

映画好きなニックとジャンの夫婦は、若い頃に父親が住んでいた古いヴィクトリア朝風のアパートを借ります。

何重にも重なった壁紙を剥がしていると、古い白地にピンクと緑のバラと葉の絵柄の壁紙に口紅で書かれたメッセージを見つけます。

 

 

 

 

マリオンの壁:どんな話?

サイレント映画のフィルムマニア、ニック・チェイニー30歳は妻のジャン27歳と、47年前にニックの父親ニック・シニアが住んでいたサンフランシスコのヴィクトリア朝風の古いアパートに仕事の関係で移り住む。

 

そこは父親が20歳の一時期を過ごしたアパートで、破風のある屋根に、半円形の窓のあるとても眺めのいい建物。窓から見えるサンフランシスコの市街地や港の景色は目を見張るほどだった。

 

たた、建物は古く何代もの住民たちによって壁紙が貼り重ねられて、快適に過ごすにはリフォームが必要。

ニックとジャンが居間の壁紙を剥がしていると、白地にピンクと緑のバラと葉の絵柄の古い壁紙に赤い口紅で何かが書かれているのを見つける。

 

<マリオン・マーシュここに住めり 1926年6月14日 読んで泣面かくがいい!>

 

それはちょうど、父親がこの家に住んでいた時に書かれたもので、引っ越し祝いにやって来た父親ニック・シニアにそれを見せると、かつてこの部屋で一緒に暮らした女優マリオン・マーシュとの思い出話を語り始める。

 

マリオン・マーシュは脇役として2,3の映画に出演し、急にハリウッドに行くと言いだし、ニック・シニアと言い争いになった。そして、映画スターへの道を歩み出そうとした矢先に交通事故で亡くなっていた。

最後に脇役で出演した映画には代役としてジョーン・クロフォードが出て、ジョーン・クロフォードはそれをきっかけに無名ダンサーからハリウッドスターに登り詰めていった。

ニック・シニアは今でもマリオンが出ていれば、ジョーン・クロフォード以上の女優になった筈だと信じていた。

 

ジョーン・クロフォード - Wikipedia

 

 

3カ月後、6月14日水曜日夜チャンネル9のTV欄にマリオンが出たサイレント映画「燃える女」の字を見つける。

マリオンの出る場面はパーティーのシーンと花嫁の付添娘の1人を演じる2つだけ。

 

映画が終わりニックが「きみは素晴らしかったよ。本当に名演技だった」とつぶやくと

ジャンが「そうよ」と、知らない声で応えた。

 

 

  

マリオンの壁:面白かったところ

地味目なジャンと精気に溢れたマリオン。

ジャンの体にマリオンが憑依して再びハリウッドを目指すが、2人の対照的な人格が入れ替わる事で印象が全く変わってしまうのが面白い。

人は外見ではなくて中身の人格でスターにも普通の人にもなれる。

小説なのでキャラクターの書き分けだけで済むが、その小説の長所を上手く活かしている。

 

 

この記事を書いていて気づいたんですが、壁に口紅で書き殴った日と、ニックたちが映画「燃える女」を見た日の日付がどちらも6月14日なんですね。ついでに、この記事を投稿した今日の日付も6月14日。

 

 

「燃える女」はマリオンが出て放映された映画のタイトルで、

最後にとって代役にジョーン・クロフォードが出たのが「ジャズの娘たち」。

29~30ページ目のニック・シニアの長台詞の訳が若干解りにくい。

 

 

  

マリオンの壁:タイムトラベルの種類

妻の体に死んだ女優が憑依する話で、憑依した女優マリオン・マーシュの目から見て未来へのタイムトラベルになっています。

憑依型のタイムトラベル。 

イベントトリガーは古いアパートと自分が出演していた古い映画がTVで放映され、それに呼び寄せられた事。

 

 

マリオンの壁:まとめ

 

古い映画の知識は殆どないんですが、ジャック・フィニイの長編小説の中では一番好きな話です。

あと、裏表紙で「落書きを見つけた数日後」って書いてるけどここ間違ってますね。

ニック・シニアを迎えに行ったのが3月の初めで、それから6月に放送なので3ヵ月くらい。

 

 

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