『ライトニング』ディーン・R・クーンツ 野村芳夫@訳
いまは流行作家としてときめくローラ・シェーン、かつては孤児院で辛酸をなめた薄倖の美少女だった。これまでの生涯、何度か人生の危機や事故に見舞われそうになったが、そのつど、どこからともなく立ち現われて危難から救ってくれた“騎士”がいた。そのたびに、空には閃光(ライトニング)が……。ジャンルを超えた傑作スーパー・スリラー。
裏表紙 あらすじより
ライトニング
LIGHTNING
Dean R.Koontz
1988年発表。
多筆家な作家のようです。
表紙折返しの作者紹介を読むと「ベストセラー小説の書き方」という本を出版されているようで、執筆論も研究されているみたいですね。
本書も複雑なストーリーが読み易く構成されている愛と陰謀のタイムトラベル小説になっています。
ライトニング:どんな話?
主人公のローラ・シェーンが生まれた日は嵐の日で雷鳴が鳴り響いていた。
息子を失って酒浸りになった医師、ポール・マークウェルは自宅待機中にスコッチを飲んでいたところ、病院から呼び出しを受ける。
ふらふらと酔いながらも車に乗り込み、自宅前の通りに出たところで、車の窓をノックされる。
金髪に青い目の若い男は銃を見せ、マークウェル医師を車から連れ出すと、医師の自宅に監禁してしまう。
その夜、病院ではマークウェル医師の代わりにカールソン医師が出産を担当し、母親は亡くなったものの、ローラ・シェーンが無事に生まれる。
ローラが8歳の頃、父親の営む雑貨店に強盗が入る。
その日も外では雷鳴が轟いていた。
強盗が金を奪い、ローラを強姦しようとしたとき、裏口から金髪に青い目の若い男が現れ、強盗を射殺する。
ローラ・シェーンの人生の節目に必ず現れ、危難から救ってくれる金髪に青い目の若い男。
彼は手紙でローラの守護天使だと名乗るが、その目的は一体何か。
ライトニング:面白かったところ
人物紹介でネタバレしているところが非常に惜しいですが、傑作です。
孤児院時代に重いエピソードがありますが、あとは楽しめる。
ただ、ローラの車の鍵をあけてプレゼントを置くダニエルはちょっと不器用すぎて怖い。
重いエピソードがあって未来への希望があって事件に追い立てられて気持ちよく読めるハリウッド映画的小説と言った感想。
ライトニング:タイムトラベルの種類
未来にしか行けないタイムマシンを使ったマシン型タイムトラベルです。
行ったきりではなく、出発から11分後のタイムマシンには帰還できます。
一度行った時間より前には行けないなど、パラドックスの設定がキーになる話です。
過去には行けないし、過去の改変はできませんが、
未来を予め見てくる事や、手前の未来に手を加えて予め見た未来を改変する事は可能です。
ただ、最後のエピソードで国一つ崩壊しているのに未来の改変が無いのはどうなのかと思う。
アメリカの独立性・孤立性に自信があるのだろうか。
絶対、他の勢力が台頭していると思うんだけどな…
ライトニング:まとめ
- 孤児院時代がイベント盛りだくさん
- 作家として名声を得るサクセスストーリー
- 守護天使の正体はタイムトラベラー
- ラストで世界情勢を適当に書き過ぎ問題
三人称小説で、ローラとシュテファンの目線で交互に話が語られます。
運命の執拗な復元に抗う話で、タイムパラドックスの設定などがとても面白く、ハラハラドキドキします。
ハリウッド映画のような面白さがある小説。
ラストの世界情勢がちょっと雑なので、そこが無ければもっとスッキリ終わったのにと思いました。