タイムトラベルの本棚

タイムトラベルを題材とした小説、映画の感想

『タイム・リープ あしたはきのう』高畑京一郎

 鹿島翔香。高校2年生の平凡な少女。ある日、彼女は昨日の記憶を喪失している事に気づく。そして、彼女の日記には、自分の筆跡で書かれた見覚えの無い文章があった。”あなたは今、混乱している。若松くんに相談なさい……”
 若松和彦。校内でもトップクラスの秀才。半信半疑ながらも、彼は翔香に何が起こっているのか調べ始める。だが、導き出された事実は、翔香を震撼させた。”そ、んな……嘘よ……”
 第1回電撃ゲーム小説大賞で金賞を受賞した高畑京一郎が組み上げる時間パズル。最後のピースが嵌る時、運命の秒針が動き出す  

 

あらすじより

 

1994年、バーチャルゲーム世界からの脱出をテーマにした『クリス・クロス 混沌の魔王』で第1回電撃ゲーム大賞金賞を受賞した高畑京一郎

1995年に発表された2作目はタイム・リープを題材にした小説でした。

他の受賞作が文庫本で出版される中、デビュー作から2作連続ハードカバー単行本での出版になった本作『タイム・リープ あしたはきのう』

完成度の高いストーリーの組み立てが見事です。

 

 

タイム・リープ あしたはきのう:どんな話?

 

週明けに鹿島翔香が学校に行くと火曜日の授業が始まる。

月曜日の記憶が無い事に愕然とした翔香は放課後、家に帰ると月曜日の日記を確認する。

日記には「あなたは今、混乱している。若松くんに相談なさい」と自分の字で書かれていた。

 

日曜日の次は火曜日

火曜日の次は水曜日

水曜日の昼休みの次は木曜日

木曜日の放課後の次は水曜日の昼休み…

 

翔香は自分は二重人格になったのかと心配になり、日記に従ってクラスメイトの若松和彦に相談する。

 

意識だけがランダムにタイムリープ(時間跳躍)していく、タイムトラベル小説の名作。

一見ランダムなタイムリープに法則性を見つけだした若松と翔香は、タイムリープ現象の原因を突き止め、タイムリープを終わらせようと悪戦苦闘する。

 

 

タイム・リープ あしたはきのう:面白かったところ

意識だけが時間軸を前後する珍しいタイプのタイムトラベル小説。

時間を前後するので、家族やクラスメイト、先生の反応の理由があとあと明らかになっていくのが面白い。

緻密なプロットと伏線回収がすごく気持ちいい作品。

90年代後半は「24人のビリー・ミリガン」や「多重人格探偵サイコ」などに代表される多重人格ブームのような時期があって、「タイム・リープ」は当時の流行を逆手に取ったような作品になっていると思います。

 

でも、「おまじない」と「クッション」はどうかなと思った。

 

 

タイム・リープ あしたはきのう:タイムトラベルの種類

主人公の意識が不規則にタイムリープする「意識スキップ型」

タイムパラドックスはないと思われる。

 

 

タイム・リープ あしたはきのう:まとめ

  1. 身体はまっすぐな時間軸の中にいるが、意識だけが時間軸を前後する
  2. タイムリープ現象を解明してしまう若松君がカッコイイ

文化放送のオーディオドラマや映画化もしている本作。

時間が経って読み返すと「おまじない」や「クッション」など違和感のある部分も出てくるのですが、読み終わるとパズルのピースがピタッとはまった時のような気持ちよさを味わえます。