タイムトラベルの本棚

タイムトラベルを題材とした小説、映画の感想

『フロム・タイム・トゥ・タイム 時の旅人』ジャック・フィニイ 浅倉久志@訳

過去のある場所にいると思い込むことによって時間旅行を行う能力を持つサイモン。彼の使命は、アメリカ大統領の命を受けてヨーロッパへと向かったまま、行方不明になっている「Z」という男の正体を探り出すことだった。Zはタイタニック号に乗船していた可能性があり、彼が任務を果たしていれば、第一次大戦は起こらなかったかもしれないのだ。かくして、サイモンは1912年のニューヨークへと旅立つ。果たしてサイモンはZの正体を突き止め、歴史を変えることができるのだろうか…。

『ふりだしに戻る』に続く、フィニイの最後にして最高の傑作!

 

  

裏表紙 あらすじより

フロム・タイム・トゥ・タイム 時の旅人

 FROM TIME TO TIME

  Jack Finney

 

 『振り出しに戻る』の25年後に発表された続編です。

ジャック・フィニイの遺作。

作中での時間経過は5年後。

 

 

 

時の旅人:どんな話?

前作『振りだしに戻る』の主人公サイモン・モーリー(サイ)は1970年代にある国家プロジェクトに参加していた。

3度のタイムトラベルに成功したサイは、プロジェクトを乗っ取った陸軍少佐ルーブとエスターヘイジ大佐に第二段階として過去への干渉を行うように命令されるが、プロジェクト発案者のダンジガー博士の両親が出会う瞬間を邪魔する事でプロジェクト自体を無かったことにし、1882年のニューヨークに移り住む。

 

しかし、その試みはルーブによって阻止され歴史の改変は起きなかった

プロジェクト発足を阻止できなかった  と認識していたサイは1882年に結婚し、一人息子も生まれていた。

 

5年後、プロジェクトがどうなっているのか知りたくなり、懐かしい1970年代のニューヨークに舞い戻る。

そこで待っていたのは自分が知っているのとなんら変わらないニューヨークで、

プロジェクトは助成金を打ち切られて中止に追い込まれていた。

 

 

時の旅人:感想(ネタバレあり)

冒頭でプロジェクト発案者のダンジガー博士が存在しない世界線で、おかしな記録が次々と見つかる。

タイタニック号が処女航海で沈没せず、ニューヨークに寄港したのを見たという老人や、ケネディ大統領がダラスで暗殺されずに2期目の当選を果たした記憶がある男と選挙のキャンペーンバッチなど。

 

ルーブは陸軍の軍事史センター所属で、最近発作に悩まされていた。

突然何かを思い出して腹を立てて怒鳴るが、自分でも何だかわからない。

ある日、病院へ向かう途中見知らぬはずの道を通り運送会社のビルにたどり着く。

そこは歴史改竄前にプロジェクトの本部があったビルで、中は普通の運送会社の倉庫になっていた。

ここからプロジェクトメンバーの名前を事を思い出し、連絡を取り、改竄前の記憶を持って現代に帰還した一人のタイムトラベラーに行き付く。

 

サイの事を思い出し、そのタイムトラベラーを使って1882年にダンジガー博士の両親が出会うのを妨害しようとするサイを襲い、元の歴史を取り戻す。

 

しかし、2人のタイムトラベラーが帰還しなかった事でプロジェクトは予算は打ち切られていた。

 

歴史改竄に失敗したと思っているサイが再び1970年代に戻った時、ルーブはサイに第一次世界大戦を阻止する計画を打ち明ける。

大統領の命を受けてヨーロッパに向かったまま行方不明になった「Z」なる人物を探し、サイは1912年のニューヨークにタイムトラベルする。

 

 

前作の『振りだしに戻る』はサイ1人が奮闘する話でしたが、今回は他のタイムトラベラーも出てきます。

 

何でルーブの提案した歴史改竄にサイが加担したのかは読んでてもよくわかりませんでした。

別の時間軸の証拠品(タイタニック号をニューヨークで見た、ケネディ2期目)を見て、時間の自己回復力みたいなものを感じて諦めたのか、

サイ自身が1882年の世界に住んで家庭を持ってしまったので歴史改竄に前ほど躊躇しなくなったのか。

 

ダンジガー博士はプロジェクトから追い出されて老年だから危ない橋を渡らないにしても、 ルーブがなんでプロジェクト頓挫した後も歴史改竄にこだわるのかがよくわかんない。

 

前作で『ルーブvsサイ』だった対立の構図が

今回は『ダンジガーvsサイ&ルーブ』になっています。

 

小道具としてはリンドバーグが大西洋横断する前に、大西洋横断の野望を持っていた飛行士やタイタニック号などが登場して面白かった。

 

ストーリーも二転三転するけど、サイの潔癖な部分が薄れてしまったのが続き物としては残念。

 

時の旅人:タイムトラベルの種類

タイムリープ型で超能力的に体ごと過去に移動します。

 

歴史の改竄が可能ですが、タイムパラドックスとして本来の歴史の記憶がチラチラ出て来ます。

急に思い出した名前に電話をかけて話してみると、急にプロジェクトの記憶が甦ったり。

 

ただ、過去の移住したタイムトラベラーがいる時点でルーブの観測範囲外でも色々ややこしくなっていると思います。

 

 

時の旅人:まとめ

  1.  『振りだしに戻る』の続編
  2. 翻訳者が福島正美から浅倉久志に変わった
  3. 写真資料の多用
  4. タイムトラベラーが複数出てきて二転三転するストーリー
  5. 時間の弾力性
  6. テシー&テッドはサイの大叔母さんと父親のコンビ
  7. タイタニック

タイタニック号沈没と第一次世界大戦、その前後でニューヨークを歩く人々の表情が変わった、というアメリカ人のノスタルジィを感じました。

 

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