タイムトラベルの本棚

タイムトラベルを題材とした小説、映画の感想

『プロテウス・オペレーション』ジェイムズ・P・ホーガン 小隅黎@訳

1974年、世界はかつてない暗黒時代を迎えていた。第二次世界大戦で圧倒的勝利をおさめたナチス・ドイツが、ヨーロッパはおろかアジアやアフリカ、さらには南アメリカまで支配していたのだ。ナチスの魔手は次第にアメリカ合衆国へと伸び、ふたたび戦争が起こるのは必至だった。そのアメリカに唯一残された最後の希望が《プロテウス作戦》だ  過去の世界に選りすぐりの工作隊を送りこみ、歴史の進路をねじ曲げて、いち早くナチスの野望を叩きつぶすのだ! かくして《プロテウス部隊》は勇躍時間の流れに飛びこんだが……人気絶頂のホーガンが時間テーマに挑んだ雄渾のSF大作!

 

<上>巻裏表紙 あらすじより

 

プロテウス・オペレーション

 THE PROTEUS OPERATION

  James P.Hogan

 

1985年発表。

 

1978年発表の処女作『星を継ぐ者』(巨人たちの星シリーズ)などで人気を博したジェイムズ・P・ホーガンが時間SFに挑んだ大作。 

 

ウィンストン・S・チャーチル

フランクリン・D・ルーズベルト大統領、

アドルフ・ヒトラー

アルベルト・アインシュタインやエンリコ・フェルミ

大学生のアイザック・アジモフ

第二次大戦中の豪華な登場人物が彩る、長編タイムトラベル小説。

 

 

 

 

 

プロテウス・オペレーション:どんな話?

物語の始まりは、1974年アメリカ。

世界はナチスドイツとアメリカの最後の決戦に向かって突き進んでいた。

 

1941年にイギリスが降伏。

1942年にナチスが世界初の原子力爆弾をソビエト連邦に使い、ソビエトはドイツと日本に分割統治されている。

南米はファシズム国家が支配し、残された西側諸国は北アメリカ、オーストラリア、ニュージーランドと数少ない。

 

 

1974年11月

イギリスでの救出任務を終え、ノーフォークに帰還した陸軍特殊工作部隊員のハリー・フェラシーニ大尉とマイク・キャシディ軍曹は、港で待っていたクロード・ウィンスレイド率いる<プロテウス部隊>に迎え入れられ、密かに開発されたタイムマシンで1939年に向かう。

 

<プロテウス部隊>の12人はナチス・ドイツソ連原子力爆弾を使う前、イギリスが降伏する前のヨーロッパに戻り、その時代に1975年のマシンと連結された<帰還門>を設置して1975年の援軍を呼び込む先遣隊。

ナチスに搾取され、奴隷にされる危機に瀕している未来の世界を救うため、歴史を変える戦いが始まる。

 

 

プロテウス・オペレーション:面白かったところ

ナチス・ドイツ核兵器はどのように開発されたのか。

その謎の答えは別の<帰還門>だった。

歴史の流れが二転三転し2025年の秘密組織<オーバーロード>の暗躍が次第に解ってくる。それと同時に、《プロテウス部隊》に選ばれたメンバー12人の秘密も徐々に明らかに。

 

1975年と連結できない<帰還門>と、独自に動き始める《プロテウス部隊》。

ナチス・ドイツと<オーバーロード>の歴史工作なのかなかなか重い腰を上げないヨーロッパ諸国とアメリカを相手に、クロードの活動が徐々に実を結び歴史を動かしていく。

 

アシモフをあまり読んだ事ないけど、作中でアイザック・アジモフが書いた原稿の小説は実在するのか気になりました。

作中では同期不調の<帰還門>を連結するヒントになる重要な原稿でした。

 

 

  

プロテウス・オペレーション:タイムトラベルの種類

タイムマシンを使ったパラレルワールド型。

歴史の改変は可能だが、別の世界が生まれていく。

このパラレルワールド間の不思議な通信が物語を面白くしている。

 

 

プロテウス・オペレーション:まとめ

  • タイムマシンを使ったパラレルワールドもの
  • 二転三転する展開が面白い
  • 少数精鋭の<プロテウス部隊>が孤立無援になった後の臨機応変な作戦行動にワクワクする
  • タイムトラベル理論が細かく検討されているのがホーガンらしくて楽しい
  • 大戦当時の諜報戦が熱い

 

多くの登場人物や組織が登場するけど、

それぞれの行動や行動原理も納得できる

読みごたえがある小説です。