『リプレイ』ケン・グリムウッド 杉山高之@訳
ニューヨークの小さなラジオ局で、ニュース・ディレクターをしているジェフは、43歳の秋に死亡した。気がつくと学生寮にいて、どうやら18歳に逆戻りしたらしい。記憶と知識は元のまま、身体は25年前のもの。
株も競馬も思いのまま、彼は大金持ちに。が、再び同日同時刻に死亡。気がつくと、また 。人生をもう一度やり直せたら、という窮極の夢を実現した男の、意外な、意外な人生。
裏表紙 あらすじより
REPLAY
Ken Grimwood
リプレイ:どんな話?
1988年10月18日午後01時06分
43歳のジェフ・ウィンストンは勤務先のラジオ局のオフィスで妻のリンダと電話をしている最中、何か重いものを胸にぶつけられた感じがして息が出来なくなり、死んだ。
リンダは2歳年下で、夫婦に子供はいない。
ジェフが目を覚ますと大学の寮にいた。
1963年春、18歳の体に戻っていたのだ。
25年前に戻ったジェフはガールフレンドのジュディに振られ、
2度のダービーで万馬券を買い、ベースボールのワールドシリーズの結果を当て、
大学の上級生フランクとニューヨークに投資会社を作る。
ジェフは未来の知識に基づいて投資をし、会社は順調に利益をあげていく。
J・F・ケネディを救うため、オズワルドの名前で犯行声明文を大統領に送り、オズワルドの身柄を拘束させる事に成功する。
だが、暗殺は防げず、名前も聞いた事が無い浮浪者が捕まる。
ケネディ暗殺にも驚かなかったジェフを見て、不気味さに耐えられなくなったフランクはジェフの元を去る。
ジェフはリンダと出会った日に同じ場所に会いに行くが、ストーカーだと思われ拒絶される。
ジェフは30歳を過ぎると、ボストン社交界の淑女でアメリカ最古最大の保険会社の令嬢ダイアンと結婚し一人娘のグレッチェンを授かるが、夫婦仲は冷え切っていく。
43歳の時に検査を受けるが100歳まで生きれるほど健康だと医者に太鼓判を押される。
43歳、1度死んだのと同月同時刻。
家の近くを散歩していた時、ジェフは死んだ。
再び目覚めると、18歳のジェフはジュリアとヒッチコック映画「鳥」を見ていた
何度も人生を43歳まで繰り返した男の不思議な話
リプレイ:面白かったところ
ループ系の話だと北村薫「ターン」や小林泰三「酔歩する男」など、繰り返される人生にだんだんと主人公が無気力になっていく展開が定番ですね。
この「リプレイ」の主人公ジェフも繰り返す人生に徐々に無気力になっていきます。
特に1度目のリプレイで娘のグレッチェンを、2度目のリプレイで2人養子のドゥエインとエイプリルを失った後の喪失感は酷く、家族を作って失うのを恐れるようになります。
やがてパメラ・フィリプスというリプレイする女性と出会いが、無気力になっていたジェフの行動に大きな影響を与えるようになります。
この小説で特徴的なのは同じ時間から同じ時間までの人生の繰り返しではなく、
死ぬ時間は決まっているのに始まる時間は遅くなっていく点です。
最初は午前10時30分頃の大学寮のベット、二度目はその日の夜の映画館、三度目はその数日後の夜、といった感じで徐々に人生の時間は短くなっていきます。
これが後々の展開に影響していくのが、よくできているなと思います。
リプレイ:タイムトラベルの種類
人生が何度も繰り返されるループ型タイムトラベル。
ただ、生き返る度に戻る時間は徐々に遅くなっていき、人生は短くなっていく。
主人公ジェフの行動よって未来は変化するが、リプレイの度に新しい平行世界が作られているような解釈になっている。
他のループ系タイムトラベル作品
リプレイ:まとめ
- タイムトラベルはループ型
- 何度も繰り返される人生
- 手に入れて失うのを繰り返す
パリのジャズ酒場で老ミュージシャン、ペシェのセリフ
(略)……しかし、最も悲しいブルースは、欲しい物をすべて手に入れ、それを失い、しかも二度とそれらが戻らないことを知っている人々のためのブルースです。世の中にこれ以上の苦悩はないでしょう。その曲の名は『アイ・ハッド・イット・バット・イッツ・オール・ゴーン・ナウ』です」
欲しいものを全て手に入れて、全て失うのを繰り返す人生なんてゾッとしますね。
未来の記憶を持つ仲間を探す時、新聞広告や雑誌広告を利用するという方法は、何の作品が一番初めなんだろう、とちょっと思いました。
『リプレイ』の出版は1988年ですが、1986年末から連載が始まったという『ぼくの地球を守って』(日渡早紀 漫画)でも「ムー」(のような雑誌)の読者投書欄で呼びかけたりしてましたね。
青春アドベンチャー「リプレイ」
1995年、NHK-FM青春アドベンチャーでラジオドラマが放送されていましたが、残念ながらCD化はされていないようです。
1回聴いてみたい。