タイムトラベルの本棚

タイムトラベルを題材とした小説、映画の感想

『レベル3』ジャック・フィニイ 福島正実@訳

たまたま行き着いた、その駅に存在しないはずの地下三階は、異世界への入口だったのか? 名作の誉れ高い表題作をはじめ、独特の温かさ、優しさ、ユーモアを内包するファンタジックな十篇を収録

 

HAYAKAWA Online 商品詳細より

レベル3

 The Third Level

  Jack Finney 

 

 

 

 

レベル3:どんな話?

1957年発表のショートショート

 

ニューヨークのグランド・セントラル駅は地下二階まである。

夏の日の夜、残業を終えたチャーリイは妻ルイザの待つアパートに戻るため、グランド・セントラル駅へと向かっていた。

この巨大な駅はチャーリイには難敵で、もう何百回も迷子になっていた。

 

その日、チャーリイが入り込んだ歩廊は次第に左にカーブしながら降り坂になってきた。なんだか変だと思いながらもチャーリイは先に進む。

その先にあったのは見慣れない駅のホームで、見慣れた地下二階の通勤用ホームとは様子が違っていた。

 

そこが地下三階だった。

 

改札ゲートは少なく、案内所も木造でひどく旧式、照明も薄暗いはだかのガス燈。

駅員もホームにいた人たちもみんな1890年代風の服装をしていた。

新聞売り子の売っていた新聞は今は廃刊になった<ワールド>紙。

ちらりと見た新聞の日付は1894年6月11日だった。

 

チャーリイはイリノイ州ゲイルズバーグまで行ってみたくなった。

大学時代を過ごしたゲイルズバーグのもっとも平和に満ちた時代。

第一次世界大戦までは20年、第二次世界大戦までは40年以上未来の、あの時代のゲイルズバーグへ。

 

チャーリイは早速、妻と自分の分のチケットを買おうとしたが、偽札だと断らる。

翌日、預金300ドルを全部おろして古銭商から200ドル分の旧紙幣を買った。

その後、再び地下三階を探すが見つからない。

 

不安に思った妻のルイザは心配して、チャーリイの友達の精神科医に診察をお願いする。

精神科医は、それは白昼夢のなかで行われた願望達成心理だといった。

現代は、不安とか恐怖とか、戦争とか心配とか、そのたぐいのあらゆるものに満ち満ちている。だからチャーリイはそこから逃避しようと思っている、という訳だ。

 

それでもチャーリイはグランド・セントラル駅で地下三階を探し続ける。

 

ノスタルジックなファンタジー小説

 

 

 

レベル3:面白かったところ

短い話なのですぐ読み終わるけど、オチが面白かったです。

 

作者のジャック・フィニイイリノイ州のゲイルズバーグにあるノックス大学出身で、その後結婚してニューヨークで働いています。

大学時代を過ごしたゲイルズバーグに愛着があり、何度か小説に登場しています。

この「レベル3」は1957年発表。1960年には「ゲイルズバーグの春を愛す」を発表しています。

 

 

 

レベル3:タイムトラベルの種類

 「タイムトンネル型」

特定の場所に入り込むことで時間を移動する形です。

 

未来の改変は恐らく可能。 

 

ただし「タイムマシン型」と同じく、未来から過去へ本人が移動するため、年齢の異なる同じ人物が同時に存在する可能性があります。

 

 

レベル3:まとめ 

  1. 駅を舞台装置にしたタイムトンネル型の短編小説
  2. 世界大戦前の平和な時代への郷愁を感じるノスタルジックなファンタジー

 

この小説、文庫本化はされていないようなので、単行本を購入するか図書館で探してみて下さい。

 

 

 

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