タイムトラベルの本棚

タイムトラベルを題材とした小説、映画の感想

『時間泥棒』ジェイムズ・P・ホーガン 小隅黎@訳

ある日、ニューヨーク市の時間がおかしくなりはじめた。全世界でもこの街でだけ、時計がどんどん遅れていくのだ。しかも街の場所ごとで遅れ方が違う。前代未聞の事態に著名物理学者が言うには「異次元世界のエイリアンが我々の時間を少しずつ盗んでいるのです」!?

議論は際限なく続くが、その間にも時間は本当になくなっていく。大騒動の顛末は?

巨匠が贈る時間SFの新機軸!

 

裏表紙 あらすじより

 

 時間泥棒

 OUT OF TIME

  JAMES P.HOGAN

 

時間泥棒:どんな話?

ニューヨークの刑事ジョー・コペクスキー53歳が朝目覚めると、デジタル腕時計は午前07時12分、枕元の目覚まし時計は午前07時09分、ねじ巻き式銀時計は午前07時19分を指していた。

 

ここ数日、ニューヨークの時間は崩壊していた。

時計は狂い、周波数がずれてラジオとTVの受信に大混乱を起こし、電話会社の時報も狂った。街中で同じ時間を示す時計は一つもなく、グランド・セントラル駅で時間を合わせた時計が道端で売られ、到着便は管制塔の時刻と周波数に同調できずケネディは閉鎖される。 

 

上司のエリウス・ウエイドに9時ちょうどにオフィスに来るように言われたコペクスキーは、ウエイドの部屋で国立科学アカデミーの理論物理学者エルンスト・グラウス博士と引き合わされ、別の次元のエイリアンが時間を盗んでいるという大胆な仮説を聞かされる。

 

どこかのお偉いさんがこの事件を窃盗として、法の執行に該当する事態と決め込んだせいで、コペクスキーは時間窃盗事件の捜査に借りだされる事になった。

 

 170ページ弱の中編SF小説。

 

 

時間泥棒:面白かったところ

コペクスキーは情報を図表にする習慣がある。

別次元の専門家(心霊学者、数学者、天文学者、宗教家など)に会った後、まず取り掛かったのはニューヨークの地図に場所ごとの時間の遅れを書き込む作業。

翌日、その地図を科学電算計算所のグレアム・エーリンガー博士が半日毎の発生状況にアップデートし、モイナハン神父が伝染病が広がる特徴的なパターンを見出す。

 

また、コペクスキーは刑事の修正として一度聞いた話を忘れない。

 

様々な仮説が持ち上がり、事態が悪化する中、デジタル腕時計の機能も全部は使いこなせないローテク・ベテラン刑事が事件に説明を見出し、解決策を模索するのが小気味いい。

 

 

時間泥棒:タイムトラベルの種類

タイム・ホール型

時間の遅延が酷い場所は赤いモヤのようなものが現れる。

遅延が20%を超えると赤方偏移が起きて、視覚的に認識できるようになる。

赤いモヤに囲まれた人の動きは遅く見え、

赤いモヤの中から外をみると、外は青く早く動いているように見える。

 

 

時間泥棒:まとめ

  1.  タイム・ホール型の時間遅延
  2. 時間泥棒を窃盗罪で捜査させられる
  3. ヘンテコな事件なのにベテラン刑事の捜査手腕が光る

 

巻頭の献辞にあるが、シャロンから貰ったのワンアイディアから書き上げた中編小説。

混乱から解決に向かう流れが心地よい作品。