タイムトラベルの本棚

タイムトラベルを題材とした小説、映画の感想

『ミラーグラスのモーツァルト』ブルース・スターリング&ルイス・シャイナー 伊藤典夫@訳

流れるだけが時間じゃない! 強者(ツワモノ)SF作家たちが腕によりをかけた時間料理の数々……。朝、目をさますと四日先の新聞が配達されていた  ファーマーの異色作「わが内なる廃墟の断章」の他、ラジカセ片手に若きアマデウスが活躍する話題のサイバーパンク「ミラーグラスのモーツァルト」、失われたバビロンの都が未来に甦るワトスン「バビロンの記憶」など、きわめつきの時間SF全13編。

 

裏表紙 あらすじより

ミラーグラスのモーツァルト

 Mozart in Mirrorshades

  Bruce Sterling & Lewis Shiner

 

 

 

 

 

 

ミラーグラスのモーツァルト:どんな話?

1775年ザルツブルグ

多時間企業の責任者ライスは丘の上から変わり果てたザルツブルグの街を眺めていた。

 

廃墟となった聖ルーペルト大聖堂、

巨大な分留塔や球根状の貯蔵タンクが寄り集まり、

精製所の煙突からは濃密な白煙がもくもくとわいている。

 

高架パイプラインはザルツブルグの石畳の迷路を一直線に切り裂く。

 

石油化学物質の刺激臭は遠くまで漂っている。

 

ゲートのフェンスの外では18世紀の現地人が集まり、

ラジオやナイロンやペニシリンをねだっている。

 

丘の上に一台のモペット(電動機付自転車)が登ってくる

ぶら下げたラジカセのテープデッキからかかっているのは「交響曲第40番ト単調」

モペットに乗っているのは、ぼさぼさのヤマアラシ・カットの若者  19歳のヴォルフガング・アマデウスモーツァルトだった。

 

 

ミラーグラスのモーツァルト:面白かったところ

26ページの短編小説

資源や美術品を搾取する多時間企業が18世紀に現れる話

 

モーツァルトはかつらを脱ぎ捨て、クラブでシンセサイザー伴奏の曲を演ってるし、

マリー・アントワネットは未来“リアルタイム”へのグリーン・カードを欲しがっている

アメリカの初代大統領はトマス・ジェファスンになっている

 

サイバーパンクの旗手の一人、ブルース・スターリングらしい文明の頽廃した世界観が面白かった

  

 

ミラーグラスのモーツァルト:タイムトラベルの種類

「タイムゲート型」のタイムトラベル

タイムパラドックは多次元理論で回避しているので、過去世界から資源を奪い尽くす事に倫理的な抵抗も持っていない

 

作中で語られるが、タイムゲートが繋ぐのは

大きな木の幹からちょっと生えた小枝のようなもので 

その枝でいくら搾取しようがライスたち未来人がやってきた未来には繋がっていない

だから過去で好き勝手できて、企業倫理は消失しているという設定。

  

 

ミラーグラスのモーツァルト:まとめ

  1. タイムゲート型
  2. サイバーパンクの悪徳企業が過去の世界で好き勝手やる話
  3. その時代の現地人も、未来から持ち込まれる文明に影響されて頽廃している