『ハドソン・ベイ毛布よ永遠に』ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア 伊藤典夫@訳
タイム・トラベルをからませた皮肉な恋愛コメディ。ハドソン・ベイ毛布は、わが国でも知られるハドソンズ・ベイ・カンパニー製の純毛良質の毛布。十八世紀末からの長い歴史を誇り、アメリカでは新婚夫婦へのプレゼントにする人たちも多いようだ。
巻末の伊藤典夫氏による解説より
ハドソン・ベイ毛布よ永遠に
Forever to a Hudson Bay Blanket
James Tiptree,Jr
ハドソン・ベイ毛布よ永遠に:どんな話?
アルバータ州カルガリーで5代続くラペール家のダヴ・ラペールはスキーヤーで好青年。
クリスマスの夜にペルーからかかってきた電話でたたき起こされた。
電話をかけてきた若い女はひどく感情的になっていて、泣きじゃくり、涙声で「何かいって、ダヴィー、ダヴィー、おねがい!」をくりかえすばかり。
ダヴが話しかけると電話は切れていた。
2日後また同じ女から同じような電話がフランスからかかってきた。
それも途中で切れた。
その2日後、 ダヴは一人で過ごすため山小屋に向かう。
車とスキーで山小屋にたどり着き、火を焚いて炊事用に雪を溶かしていると、ヘリコプターの音が聞こえてくる。
ヘリは人降ろすと去って行く。
ヘリから転がり出て来た青白い人影は、よたよた寄ってきて「ダヴィー!ダヴィー!あなたなの?」と言う。
あの電話の若い女だった。
女は裸で銀色の髪で、歯をガチガチ言わせている。
ダヴは女を山小屋に運びハドソン・ベイ毛布をかけてやった。
ハドソン・ベイ毛布よ永遠に:面白かったところ(ネタバレあり)
30ページの短編小説です。
中盤まではドタバタコメディといった感じ。
ちょいエロ。
意識を入れ替える装置タイム・ジャンパー
16歳のルーリーの中には75歳のルーリーが現れ、ヘリに乗ってカルガリーまでやってくる。
16歳のルーリーには、精神科医がかけた催眠術“錯誤”がかかっている
「男を見るとむかつく」ようになっていて、結婚まで貞操を守るように父親がかけさせた
しかし、75歳のルーリーは錯誤が解けていて、カルガリーまでダヴに会いに行く。
なんだかんだあってルーリーとダブは結婚するが、
ルーリーが縁もゆかりもないダヴに惚れて山小屋まで来たのは、
タイムジャンプが終わって16歳に戻った時、目の前に居たダヴに惚れたからで、
それを元に75歳のルーリーは16歳に戻った時にダブに会いに来て・・・この無限ループの始まりがよくわからない
最後はタイムトラベル短編らしい皮肉なオチでした。
ハドソン・ベイ毛布よ永遠に:タイムトラベルの種類
「機械型」のタイムトラベルで、意識だけが過去の肉体と入れ替わる珍しい形
それぞれ意識は入れ替わっていて、16歳の身体に75歳の意識がジャンプしているときは75歳の身体に16歳の意識がジャンプしている。
もしジャンプ先の身体が亡くなっていれば、タイムジャンプは起きない。
この設定から意表を突いたラストが面白い作品。
ハドソン・ベイ毛布よ永遠に:まとめ
- 意識交換型のマシン型タイムトラベル短編
- ちょいエロ
- 伊藤典夫さんの翻訳は原作に合わせて変わる
前日に読んだ「たんぽぽ娘」も伊藤典夫さんの翻訳でしたが、原作に合わせて翻訳の雰囲気も変えているのだなと気づき、翻訳という仕事の難しさとかが感じられて面白かったです。